男子校に転校してはやくも半年は過ぎ1年近くなってきた。
なんて現実逃避は置いて、今日はバレンタインなんだ。
もちろんここは男子校、オレは男。チョコなんて持っていないし貰う気もない。
普通なら「男子校のバレンタインなんてただ空しいだけ」のはずなんだけど、なんでオレはあるはずもない女子制服を着て授業中に期待するような男の視線を受けないといけないのだろう。
さらに問題なのが休み時間で、もうすぐチャイムが鳴りそうなのを確認してオレはすぐに教室から出れる準備をする。
キーンコーンカーンコーンと聞きなれた授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、日直が号令をかけ終わった瞬間、即教室を出た。
スカートが短いのが気になるけど走りやすいから助かった。全力で走らないとオレと同じくすぐに教室を出た男どもに追いつかれセクハラを受けるに違いない。経験上絶対そうなる。
「ゆうなちゃああああん」
「くるなぁぁ!変態ぃ!」
女子制服と共に無理やりつけられたウイッグが邪魔でしかたないけどはずしたらはずしたでもれなく変態どもに回収される。それだけはいやだ、だってあいつら本当に喜んでくるから。
「チョコくれー!」
持ってないし持っていてもこいつらには絶対あげない。
「チョコチョコチョコチョコ」
やばい、背後から聞こえる声が怖い。しかも近づいてる。むしろ、真後ろから・・・
「つーかまえた」
午後の授業にオレが出席することはなかった。